農業

就農するにはどうすればよい?新規就農と雇用就農の違いや支援について解説!

農業をやってみたい、農業従事者として働いてみたい、そう考えるものの、どうしたら始められるのか右も左もわからないという人も多いと思います。
一口に「農業を始める」といっても、その形態は様々です。
そこで今回は、就農に向けて知っておきたい、様々な就農の方法や支援制度についてご紹介します。

今、就農者が求められている!?

現在、農業に興味を持つ人が徐々に増えているのと同時に、実は農業の側でも新たな人材を求めています。今の日本の農業を取り巻く現状にその理由はあります。以下で、就農者が求められる背景を見ていきましょう。

●農業従事者の高齢化と減少
総務省の発表によると、2000年時点で約240万人だった農業従事者は、2020年までの20年の間に約43%も減少し、約136万人になっています。
平均年齢もその23年間で7歳上昇しており、59.6歳から66.6歳に。
このままでは農業従事者の数がますます減少していくことは明らかです。少しでも農業従事者を増やすことへの対策が急がれています。

参照:(2)農業就業者の動向:農林水産省
   農林水産基本データ集:農林水産省

●離農者が多い
これまで農業に従事していた高齢者のリタイアにより、農業従事者の数が減少する一方で、新たに農業に参加した若い農業従事者の離農が多いのも課題の一つとなっています。
実際就農してみたら、実態が思っていたものと違った、というのが理由の大部分を占めていることが分かっています。

具体的には、給与が見合わない、勤務時間に不満がある、などの理由が挙げられます。
また他方では、就農に向けての研修や、実際に就農してから、栽培などに関する技術の研修や継承は行われているものの、農業経営などに関するノウハウ継承は十分に行われていないなどといったことも理由の一つと言われています。
この部分が継承されないことで、いくら良い農産物を生産したとしても農業経営が立ち行かなくなってしまい、離農に繋がってしまいます。

就農とはどんな種類があるの?

就農と一言で言っても、その種類は様々です。今回は、大きく分けられる二つの方法について紹介します。

●自分で起業する新規就農
自分自身で農業という事業を起こす方法を新規就農といいます。これは、いわゆる起業と同じです。農地を探すところから、作物の選定や販路の開拓などすべてを自分で行います。
雇用されるのと違い、自由な働き方ができるというのがメリットですが、初期投資の金額や労力が大きく、リスクなどもすべて自己責任になります。

●農業法人等に就職する雇用就農
農業法人の従業員として働くことを雇用就農といいます。
雇用就農は、農業未経験者が約8割を占めています。まだ知識もノウハウもないというゼロの状態から農業を始めたいという人にはぴったりの方法で、初心者が農業にチャレンジするスタイルとしては主流と言えます。法人という強いバックアップのもと、農業を始められますしノウハウを学びやすいのも特徴です。

雇用という形のため「自分のやりたい農業が完全に実現できる!」というのは難しいかもしれませんが、初期投資や準備が必要なく、安定した収入があるのは大きな魅力です。この雇用就農でノウハウを培い、将来的に独立するというケースも少なくありません。

一番難しいと言われる新規就農。その理由とは?

新規参入者とも呼ばれる就農形態の一つである新規農業。実はこの就農の方法は一番難しいと言われています。その理由を探ってみましょう。

●初期投資が莫大
新規就農は、一からすべて自分で準備をしなければいけません。もちろん、ある程度の資金力がないと成り立ちません。
新規就農相談センターの「新規就農者の就農実態に関する調査結果」によると、新規就農を果たした農業従事者が、就農するにあたって用意した自己資金の平均額は232万円と出ています。そして、実際に就農した1年目に必要となった金額の平均は569万円です。
これは、実際の農業を経営していく金額だけではなく、生活のための資金も含まれています。就農前に、その資金の調達方法や運営資金だけではなく、就農した際の生活で実際にどれだけのお金がかかるのかもしっかりと計画に入れておきましょう。
また、技術やノウハウの取得のために農業大学校や民間の専門学校に通うとなればさらに費用がかかります。

●労力がかかる
新規就農をするにあたって、かかるのはお金だけではありません。
まず、農地を自分自身で見つけなければいけない労力がかかります。それだけでなく、できるだけ初期費用を抑えようと考えた時、機械や施設に関しても中古品を探して購入したり、レンタルを活用したりと、リサーチする時間といった労力も必要になります。
また、農地を現在の居住地から離れた場所にする場合、自分自身の住む住宅も新たに必要です。資金や農地だけを準備すればできるものではない、ということをしっかりと頭に入れておきましょう。

●周囲との関係づくりが大変
都市型の農業ではなく、農村部に移り住んで農業を行う場合、その土地を購入したり借りたりして農業に勤しみ、生活していくことになります。
地域の人々との円滑な関係を築くため、地域の行事やお祭りなどへの積極的な参加をするなど、地域の一員としての役割を果たしていくことが大切になってきます。
こうすることで、農業用水や農道の確保などの交渉が滞りなく進められるなどのメリットも生まれます。
まずは、自治体が開催している研修に積極的に参加するなど、待ちの姿勢ではなく自分から行動を起こすことが重要です。

●販路が確保できない
新規就農をする時に多くの人が見落としてしまうのが、販路の確保です。
良い農産物を生産すれば、当たり前のように消費者が購入してくれるということはありません。
販路を確保するためにも、地域の人と密な関係づくりをし、地道な営業をしていくことが重要です。
また、自分の生産した農産物を6次産業化に乗せて加工販売することも視野に入れておくと良いかもしれません。

新規就農のメリットは?

初期の資金や労力の大きさについつい焦点を当ててしまいがちな新規就農。ここまで新規就農のハードルの高さをお伝えしましたが、新規就農にも大きなメリットがあります。
大変である分、自分で経営面を管理して、本当に自分自身のやりたい農業をすることができるのも新規就農の利点と言えるでしょう。
もちろん、農業経営の内容だけではなく一日の過ごし方やスケジュールにも高い自由度があるのも大きな魅力の一つです。

新規就農は販路が確保しづらい点については先述しましたが、逆手を取って豊富なアイディアを活かしてユニークな加工や販売方法を実践することも可能なのです。
自分自身の中に明確に実現したい農業のスタイルやアイディアがある人にはぴったりの方法と言えます。

新規就農における支援は?積極的に活用しよう!

新規就農センターを利用

新規就農を目指しているけれど、まだ右も左もわからない、そんな場合は各都道府県にある新規就農センターに足を運んでみましょう。
初心者でも参加しやすいイベントやセミナーを開催している自治体も多くあります。
また、まずは実際に農業の場で働いてみたいという場合はインターンシップとして受け入れてもらうという方法もあり、期間は短いもので1週間、長いもので数ヶ月とその期間は様々です。こちらも、新規就農センターなどで見つけることができます。
しっかりと目的を持って就農相談をすれば、農業に対しての知識がない段階から丁寧に相談にのってもらえて、アドバイスもしてもらうことができるのが新規就農センターの特徴です。
高齢化により就農者の減少が続いているため、国や自治体で就農をバックアップしてくれます。

各自治体による就農のための支援制度も!

自治体によっては、農業未経験者や都市部からのIターン就農希望者に対して、最長2年間の受け入れをして農産物の栽培技術を伝授するなどの取り組みをしている自治体もあります。
経験豊富で技術を持った生産者から、土作りや栽培のノウハウを学べるのはもちろん、受け入れ中の住宅の確保から就農までをきめ細やかにバックアップしてくれるという場合もあるのです。
農業に興味はあるけれど、ノウハウや技術どころか、多額の資金もツテもない、そんな人にはとても魅力的な制度です。
こうした支援は日本全国で行われていますので、自分自身のやりたい農業に一番近いものを探してみましょう。

国の補助金も視野に入れましょう

もちろん、各自治体だけではなく、国も新規就農者を支援してくれます。
農林水産省の「農業次世代人材投資資金(準備型)」は、就農予定時の年齢が原則として49歳以下の「都道府県が認める道府県の農業大学校等の研修機関等で研修を受ける就農希望者」等の条件を満たす人を対象に、就農前の研修資金として最長2年間、年間150万円を交付する、という制度です。
これは、各都道府県が認める農業大学校や農家で1年以上研修していて、さらにその終了後1年以内に農家になるということが条件で、これから農業を始めたいと考えている20〜30代にとっては嬉しい制度です。
就農前にこうした制度をしっかりと調べて活用することで、就農へのハードルを下げることができます。
農業次世代人材投資資金(旧青年就農給付金)

就農後も支援あり

いざ就農しても、なかなか思い通りに収穫ができず、最初のうちは支出の方が多いということも現実的に多くあります。
そんな時に利用できるのが、農林水産省の「農業次世代人材投資資金(経営開始型)」というもの。
こちらも原則としては就農予定時の年齢が49歳以下の独立就農者を対象にしています。経営安定のための支援金として最長5年間、年間最大150万円を交付してくれます。
ただし、こちらの支援金の場合は就農後の総所得の要件もあるので、自分が要件を満たすかどうかを確認する必要があります。

雇用就農して、将来独立するという道も

農業での独立を目指す場合、まずは農業法人などに雇用就農として就職し、将来的に独立するという方法もあります。
資金も、農地も住まいも、ノウハウや技術も、と一気に自分自身で背負って新規就農するのは、いくら支援や補助金があってもハードルが高い、と考える人は多いはずです。
まずは、雇用就農で安定した収入を得ながら、独立のための資金やノウハウを蓄積していく、というのは賢明な方法と言えます。
雇用就農を選んだ人への「農の雇用事業」という支援制度もあります。これは就農者が栽培技術などを実践的に学べるようにしよう、というもので、農業法人向けにOJT研修の実施費用を支援するというものです。原則として45歳未満、就農経験5年以内の正社員が受講できます。
雇用就農者に直接補助金が出る、というものではありませんが、従業員のキャリアアップに努めているかどうかは、就職する農業法人を選ぶポイントにもなります。

後継者として就農する方法も

農業従事者の高齢化の課題が浮き彫りになると同時に表面化してくるのが、農家の跡継ぎ問題です。
跡継ぎがいない農家に後継者として就農する、という方法もありますが、そもそも跡継ぎがいない農家に知り合いもいないしどのように探せば良いかわからない、という人がほとんどです。
そんな人のために、全国の新規就農センターでは、農林水産省の補助事業として「農業経営継承事業」というものを行っています。
後継者がおらず5年以内に経営の中断の意向を示している農家と、新規就農を目指す原則として45歳未満の人をマッチングして支援するというものです。
一見、新規就農をするには一番良い方法なのでは? と感じますが、この後継者として農業を始めるには、移譲してくれる農家の人との信頼関係が非常に重要になります。
これまでに培ってきたノウハウや栽培方法に敬意を払って、しっかりとその想いまでを理解することが大切です。

自分にあった就農形態を見つけよう!

農業というフィールドで働きたい! そんな時に重要なのは、自分にはどんな就農形態が合っているかをしっかりと見極めることです。
新規就農、雇用就農、後継者として就農など、それぞれに長所と短所があります。それらをしっかりと理解し、自分の性格やビジョンと照らし合わせてみましょう。
自分自身の目指す農業というものを叶えるために、自分の目指す方向を明確にして就農を目指してみませんか。

「名古屋農業園芸・食テクノロジー専門学校」は、名古屋市栄ミナミにキャンパスを置く専門学校です。
名古屋市の中心地に位置しており、充実した環境で学生生活に励むことができます。
「製菓・製パンコース」「スマート農業&流通コース」「食農&創作料理コース」など、全2科8コースからなるクラスを設置。
幅広い視点・立場から、食や農芸について学べるのが名古屋農業園芸・食テクノロジー専門学校の特徴です。

●テクノロジーを通して農業・食を学ぶ「スマート農業&流通コース」
2022年4月に開講予定の「農芸テクノロジー科」では、全4つのコースを設置。
そのなかのひとつである「スマート農業&流通コース」を紹介します。

スマート農業&流通コースでは、テクノロジーを通した農作物の生産管理や商品開発、流通・販売に関する専門知識を学ぶことができます。
実践式で食材の生産メカニズムを学べるほか、商品価値を高めるためのブランディング・マーケティング知識を身につけられるのが特徴です。

また、農作物生産者を目指す場合に必要なJGAP・JAS認証などの取得制度についても学ぶことができます。
農園栽培実習や商品ブランディング、ITテクノロジー演習や調理加工技術などのカリキュラムを通して、食の未来を切り開ける人材を目指せるのが強みです。

将来的に目指せる職業としては、農作物生産者はもちろん、テクノロジー×農業の知識と経験を活かせる「農業ITコンサルタント」、注目を集めている水耕栽培に携われる「水耕栽培生産者」、そのほか、農場レストラン経営者、スマート農業従事スタッフなどの職業も目指せるのが特徴です。
各分野への就職はもちろん、レストランやカフェなどの店舗経営者を志す学生には店舗プランニングやメニュー開発などを通して独立・開業サポートも行っています。